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09年度 対県政策・制度要請

良質な雇用の創出と安心安全社会に向けて

2009年度対県政策・制度要請おこなう

◆連合兵庫は11月26日(水)、森本洋平:会長、酒井行雄:副会長(政策検討特別委員会委員長、基幹労 081126taikenseisakuyousei002.jpg 連)をはじめ、専従役職員が県庁へ出向き、『2009年度兵庫県に対する政策・制度要請』をおこないました。
◆兵庫県側は、井戸敏三:知事が出席したほか、中村稔:産業労働部長はじめ担当部局が対応しました。

◆森本会長から井戸知事へ『要請書』を手渡し、酒井副会長が要請概要を説明し、その後、最近の経済・雇用情勢に関して意見交換をおこないました。

◆なお、この『要請』に対する回答は、09年3月下旬に文書で提示される予定です。

 

 

 2008年11月26日

 

 

兵庫県知事
 井 戸 敏 三 様

 

日本労働組合総連合会兵庫県連合会
会 長  森 本 洋 平

 要 請 書

貴職におかれては、560万県民の生活安定に向け、連日のご奮闘に心から敬意を表します。

しかし、日本社会のさまざまな「二極化」や、米国サブプライムローン問題に端を発した経済動向もあって、私たち勤労者を取り巻く環境は厳しく、不安は増すばかりです。兵庫県を支える大多数の県民は勤労者とその家族であり、活気に満ちた地域社会を築くためには、勤労者の活力を高めることが不可欠です。

 

また、法の改正や整備が進められている医療・介護・次世代育成などの分野における事業の実施主体の多くが県ならびに市・町であり、少子高齢化の進む中で地方自治体の果たすべき役割と責務は益々大きくなっています。そして、兵庫県の財政は「新行財政構造改革推進方策」を発表するなど大変厳しい状況にあると認識してはいますが、国にも積極的に働きかけていただきながら、財政の安定化と勤労者の「安心」にあらためてご尽力をお願いするところです。

私たちがめざす社会は、「労働を中心とする福祉型社会」です。「労働を中心とした福祉型社会」とは、「すべての人に働く場を保障し、公正な賃金、労働時間、均等待遇など社会的基準が張りめぐらされ、労働災害や失業、疾病や老後など、いざというときに生活を保障するセーフティーネットが組み込まれた社会」です。それは同時に、自然環境と調和する循環型社会、市民参加の地方分権型社会をめざす取り組みでもあります。

2009年度の要請項目は、取り巻く環境と県内の雇用の状況などから、引き続き、① 産業政策、② 雇用の安定と創出、③「法違反の賃金不払残業」などの労働基準違反の一掃、の3項目を最重点課題として取り組みます。

折しも、団塊世代の退職、そしてかつて経験したことのない人口減少社会への移行という、大きな社会変化が始まっています。これらへの対応として、平成18年、全国に先駆けて、兵庫県・兵庫県経営者協会・連合兵庫による「ひょうご子ども未来三者合意」がなされ、今年度はこれまでの三者に加えて兵庫労働局も加わった四者により「仕事と生活のバランス推進」をめざす「共同宣言」を採択しました。連合兵庫は、「非正規労働センター」の立ち上げをはじめ、強い決意のもとに各施策に取り組みます。

こうした考え方を基本にして今回の要請を行っていることをご理解いただき、兵庫県民の「安心・安全」と「ゆとり、豊かさ、公正な社会」をめざして、以下の施策の実現を強く要請いたします。

 

 

2009年度 兵庫県に対する政策・制度の要請 

 

Ⅰ.地方税財政の確立

1.国から地方への税源移譲の実施を踏まえ、個人住民税の公正な徴税に向けて、担 081126taikenseisakuyousei003.jpg 当職員の養成等、徴収体制整備をはかること。特に、2009年10月より、個人住民税の公的年金からの特別徴収が行われることから、混乱が生じないよう、各自治体に対し、住民への周知・広報の徹底と本人同意の上実施するよう指導すること。

2.地方交付税の対象税目の拡大等によって財源の確保をはかること、また、その配分基準の見直しにあたっては、財政需要の実情を把握し、国に対して十分な協議を行うことを求めること。

3.歳出について、住民ニーズに沿ったものとするよう、地域ごとに政策・行政評価、情報公開を行い、効率的な執行を努めるとともに、中長期の財政計画を策定すること。

Ⅱ.産業政策の推進

1.産業の振興

(1) 地域の特性を生かした経済・雇用戦略を策定し、行政・企業・労働者の三者連携により、その具体化に取り組むこと。

(2) それぞれの地域の活性化を通じて地方・地域経済の回復・発展をはかるために、県が中心となって、産・官・学・金・労(企業・行政・大学・地域金融・労働者)が連携し、広域自治体などの手法により、従来行政の枠組みを越えた「総合的な地域活性化対策」を各地域の特性に合わせて展開すること。

(3) 産・官・学・金・労による複合的な人的ネットワークを形成し、情報の共有化と利用の促進などによる技術開発支援システムを構築すること。既存の研究機関への支援と新たな研究機関の誘致を進め、先端技術の応用による地域の企業への支援を行なうこと。

(4) 地域の特性を活かした地場産業の活性化をはかる施策に関して、地域ごとの事業計画と進捗状況を明らかにし、更なる推進をはかること。
 
また、それぞれの地域の特性を生かした施策の展開が行なえるよう、各県民局と地域の労使の連携が深まるように具体的な施策を講じること。

(5) 固定資産税の減免など税制面での優遇策を講じ、産業の空洞化地域に対する積極投資を促すとともに、産業集積条例を活用した企業や研究所の誘致を積極的に行なうこと。

2.中小企業政策

(1) 中小企業の活性化のため、引き続き、県の「中小企業融資制度」を拡充すること。あわせて政府系金融機関の事業融資制度を中小企業が活用できるよう周知等を行うこと。

(2) 地域雇用創造支援事業について積極的に取り組むとともに、経済の血液である金融を司る地域金融機関と、豊富な人的ネットワークを持つ労働組合が参画した産・官・学・金・労によるネットワークを整備すること。
また、ネットワークを活用して、技術を有する中小企業の受発注支援など経営基盤強化を支援すること。

(3) 中小企業の特許などの工業所有権や著作権の取得を促進し、中小企業の技術も含めた知的財産権保護と有効利用の強化に向けて、取得費用の助成や相談会の開催を行うこと。

(4) 中小企業による新卒者の採用を支援するため、兵庫労働局と連携してハローワーク等を通じて積極的に採用会を開催すること。
さらに、業界団体・協同組合等が共同採用会を開催する場合には、必要に応じて支援を行うこと。

(5) 中小企業の取り引きの身近な「駆け込み寺」としての役割を果たすべく、本年4月から全国47都道府県に設置された「下請け適正取引推進センター」と兵庫県の連携強化をはかることで一元的な対応を行うとともに、自治体に対しても専門窓口を設置するよう指導すること。

3.消費者相談センター等の拡充

(1) 悪質商法の撲滅に向けて、広報活動等の被害防止策、あるいは消費者相談センター等による救済活動等の充実・強化を図ること。また、消費者センター等が常設されていない自治体に、消費者相談の窓口機能を常設するよう指導すること。

(2) 消費者相談センター等において、相談員に必要な権限を与えると同時に、人材・予算の確保、相談員の身分・雇用の安定や労働条件の改善を図ること。

Ⅲ.良質な雇用の創出と能力開発の充実強化

1.雇用の安定・創出

(1) 連合兵庫、兵庫県経営者協会、兵庫労働局と連携し、働く者の雇用の安定と公正処遇の確保を重視し、産業政策と一体となった地域雇用政策を確立すること。また、雇用は期間の定めのない直接雇用であることを原則とし、地域における良質な雇用機会の創出に向けた雇用対策を強化すること。

(2) 兵庫労働局と連携し、若年者、女性、高齢者、障がい者等、働く希望を持つすべての者の就業促進と雇用の安定に向け、職業訓練・職業紹介・就職が連動した離職者支援の確立・強化、非正規雇用から正規雇用への転換支援等の雇用対策を強化すること。

(3) 兵庫労働局、自治体、地域の教育機関、企業、労働組合等と連携し、「ジョブ・カード制度」の普及促進に取り組む等、地域における職業能力開発機会を拡充すること。また、パート、有期契約、派遣、請負労働者等の非正規労働者、フリーター等の若年者、障がい者、母子家庭の母、雇用保険未加入者等に対する公的職業能力開発施策を強化するとともに、「職業訓練バウチャー」制度などを導入し、訓練受講者に対する経済的支援を行うこと。

(4) 公共職業訓練は、雇用のセーフティネットであること、ものづくり分野等における人材育成、技能・技術の継承・発展にとって重要な役割を担っていることを踏まえ、公共職業訓練及び実施機関(都道府県職業能力開発校、雇用・能力開発機構運営の公共職業能力開発施設等)の安易な民間委託・統廃合を行わないこと。

(5) 地域社会の課題を解決するため、コミュニティビジネスへの支援を強化し、地域活性化・雇用創出をはかること。また、その起業においては、地域産業との連携や多様な人的ネットワークが必要となるため、人材の紹介、異業種交流イベント開催や、大学・企業等とのマッチング機能を充実させること。

(6) 地域の産業振興と労働者生活を守るために、2002年3月に改正された地方自治法施行令に拠り、すべての請負にかかわる入札・契約において、環境、男女共同参画、障がい者雇用、生活賃金などの実現に向けて「公契約基本条例」を制定すること。 

2.若年層対策

(1) 兵庫労働局と連携して、依然として高水準で推移している若年層の失業ならびにいわゆるフリーター・ニート対策を展開すること。

① 技能の継承と将来的な人材育成などが企業のみではなく社会的な課題となっており、「若者しごと倶楽部」の充実など、若年未就職者や不安定就労者への就職支援を強化すること。

② 若年者に対する相談援助・情報提供や就職支援・職業能力開発サービスなどをワンストップで提供できる取り組みを強化すること。
 
また、「デュアルシステム」による職業能力開発の具体的な取り組みを積極的に進めること。

(2) 子どもの成長段階に応じた勤労観・職業観を育むため、小・中・高の教育課程においてキャリア教育を進めること。中学生の「トライやる・ウイーク」と高校生の「トライやる・ワーク」や「就業体験」の連携をはかり、取り組みの効果を高めること。
 
また、高等学校における進路指導(就職指導含む)体制を強化すること。

(3) 「ものづくり大学校(仮称)」の創設と整備を推進すること。「体験館」と「人材育成」の機能を発揮して「体験」と「訓練」のプロセスが相互に触発・連携することにより、ものづくり人材の育成と、小中学生を中心としたものづくりを担う人材の育成をはかること。 

3.中高年対策

(1) 「兵庫しごとカレッジシステム運営協議会」および「兵庫県地域労使就職支援機構」と連携し、雇用のミスマッチの解消などきめ細かな取り組みを強化すること。

(2) 兵庫労働局と連携し、地域雇用創出プランの実現ならびに解雇・失業者対策の取り組み強化など、雇用創出と雇用安定の取り組みを展開すること。
 
また、ハローワーク、能力開発機関の運営実態の把握と職業紹介・能力開発の連携のあり方について、労使を含めた関係者が議論できる検討の場を設置すること。

(3) 離職を余儀なくされる労働者、とくに中高年齢者に対する再就職、職業能力開発訓練を強化すること。その際、労働局と連携し、地域の実態に即して「職業訓練→職業紹介→就職」が一体となった取り組みを強化すること。

4.労働安全衛生対策

(1) 労働安全衛生対策ならびに過労死・メンタルヘルス・化学物質曝露など健康確保対策の充実をはかること。

(2) アスベスト等の健康に有害な物質の使用状況および地域住民を含めた被害状況等についての実態調査にもとづき、情報提供・啓発活動・相談体制を整備すること。また、地方労働局へアスベストを原因とする罹患者の労災認定を積極的に行うことを働きかけるとともに、「石綿による健康被害の救済に関する法律」の施行にともない、国と連携した対策を推進すること。
 
また、公共施設等でのアスベストの撤去を計画的に推進するとともに、社屋、店舗、住宅等のアスベストの撤去を計画的に実施するため、その規模に応じた封じ込め・撤去費用等について補助金制度などの助成措置を実施すること。

(3) 中小企業の安全衛生管理体制の強化のため、リスクアセスメントや過重労働防止措置等をすすめる産業医に加えて、外部の労働安全衛生コンサルタント等の専門家の活用を促進すること。

5.就職差別の廃絶の取り組み

  兵庫労働局と連携して、就職差別の廃絶のため、公正な採用選考をめざし厚生労働省の示した「応募書類」の周知を図り、違反に対する指導を強化すること。

Ⅳ.「法違反の賃金不払い残業」などの労働基準違反の一掃とワークルールの確立

1.兵庫労働局と連携を密にして、引き続き「法違反の賃金不払残業(いわゆるサービス残業)」などの労働基準違反一掃と過重労働につながる長時間労働を撲滅するため、労働関係法の周知・徹底、監督を更に強化し、パートや派遣労働者をはじめ、すべての労働者の労働条件の確立を促進すること。

2.兵庫労働局と連携し、労働契約法を含む労働関係法の周知をはかり、労働者からの相談や申告に親切・迅速に対応して、労働基準法違反、最低賃金法違反、労働安全衛生法違反等、労働関係法違反を一掃し、すべての労働者の労働諸条件の確立と、安心・安全・健康を確保すること。

3.兵庫労働局と連携して、派遣労働者からの相談・苦情に対応すること。

4.兵庫労働局と連携して、派遣元・派遣先事業所に対する個別指導の徹底をはかり、労働基準行政との連携強化等により偽装請負・違法派遣の一掃に努めること。その際、それらの指導監督により労働者の雇用不安が生じないよう、雇用対策を講じること。請負の場合には、労働・社会保険の加入についても社会保険事務所との連携をはかり、加入の徹底をはかること。

5.「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等のための措置に関する指針(パート指針)」を活用した指導を強化すること。
 
また、男女雇用機会均等法改正法案に対する附帯決議の趣旨を踏まえ、雇用形態の多様化に鑑み、派遣元などあらゆる事業主に対する均等法適用の周知徹底を図り、実質的な格差解消のために、法の適格な適用・運用を図ること。

Ⅴ.ワーク・ライフ・バランス社会の実現と子育て支援策の拡充

1.連合兵庫・兵庫県経営者協会・兵庫県による「仕事と生活の調和と子育て支援に関する三者合意(ひょうご子ども未来三者合意)」に基づき、具体的な施策の積極的な推進をはかること。

(1) 働き方の見直しによる「仕事と生活の調和」の推進
  
働く意欲を持っている一人ひとりが、各々の生活段階において、仕事と生活を調和させ、十分に能力を発揮して働くことができる社会の実現をはかるため、「仕事と生活の調和」の普及啓発と多様な働き方のモデル開発を推進すること。

 

(2) 地域における子育て支援
 
核家族や地域社会における人間関係の希薄化等の子育て環境の変化に伴い、孤立しがちな母親の育児の負担感や不安感が増大し、家庭のみでは子育てが困難となっていることを踏まえ、地域ぐるみの子育て支援の実現をはかるため、以下の取り組みを推進すること。

     ① 子育て支援をしているボランティア団体や活動資金援助組織への支援
     ② 男性の子育てへの参加推進と子育て応援企業等への総合的支援
     ③ 地域コミュニティにおける病児・病後児保育体制の構築

(3) 子育てや介護と仕事の両立支援の推進
 
育児や介護を担っている人が、働き続けることのできる社会、また育児や介護を理由に一度退職した人が再度仕事に就き、働くことのできる社会の実現をはかるため、以下の取り組みを推進すること。

① 育児休職や介護休職の取得推進と復帰時の支援
② 出産や育児等を理由として退職した人を再雇用する制度の導入及び活用促進
③ 出産・育児や介護などのために一度退職し、再び就職や地域活動などにチャレンジする人などの総合的な支援

(4) 兵庫労働局との連携による支援

  県の施策と関連した兵庫労働局が実施する両立支援対策事業について、それぞれの施策と事業が密接に連携して行なわれ、相乗効果が発揮できるように、兵庫労働局と連携を深めること。

2.各自治体に対して、保育所の運営において、公立保育所運営費の一般財源化にかかわらず、保育の質の維持・向上をはかるように指導を行なうこと。

3.児童虐待の予防と対応を強化するため行政機関と地域の連携を密にするとともに、こども家庭センターの増設や専門職員の増員、民間の施設への財政的支援や専門職員の派遣、各自治体への児童福祉士の配置をすすめること。

4.各自治体に対して、学童保育についての責任の明確化を求めるとともに、学童保育をそれぞれの小学校区に少なくとも一箇所、早急に整備するよう指導すること。

5.各自治体に対して、地域のニーズに応えるため保育制度の改善・拡充を指導するとともに、「認定こども園」が教育・保育それぞれの基準を満たすことを確保すること。

Ⅵ.男女平等社会の実現

1.男女共同参画に関する条例制定について、男女共同参画社会基本法及び第2次男女共同参画基本計画の主旨に沿って、各自治体の条例制定に向けた支援を行うこと。条例制定が困難な自治体には、「男女共同参画社会基本法」に基づいた参画計画づくりを支援すること。なお、条例制定または参画計画に、男女雇用機会均等法等の履行確保を図ることと、実質的な男女平等を実現し、事実上生じている男女労働者間の格差を解消するための企業のポジティブ・アクションを盛り込むとともに、社会的性別(ジェンダー)についての誤解や恣意的な解釈が行われないよう、主旨の理解や周知をはかること。

2.雇用においては、性別を理由とする差別の禁止、間接差別の禁止、妊娠、出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止、セクシュアル・ハラスメント対策の強化に向けた措置等、改正男女雇用機会均等法の履行の確保に向け、兵庫労働局と連携して取り組むこと。

3.県における審議会などへの女性の参画については、これまでも積極的に取り組みを進めてきたが、さらにその参加比率を高めるとともに、各自治体へも審議会などへの女性の参加比率を高めるように指導すること。

Ⅶ.地域医療の充実

1.第164通常国会で成立した健康保険法等の一部改正、医療法等の一部改正の内容を踏まえた「医療費適正化計画」の策定、及び次期「地域医療計画」の見直しにあたっては、保険者、医療機関、さらに国民・患者への情報開示と、それぞれの立場からの議論への参加機会を確保すること。
 
また、関係する協議会、審議会等の設置、運営にあたっては、その全体像を明らかにすると共に、国民・患者に安心・信頼の医療を提供できるよう、各自治体と十分な連携体制を構築すること。

  ① 「地域医療計画」の見直しにあたっては、患者の視点に立ったものとし、分かりやすい指標と数値目標を明示すること。さらに地域医療連携体制の構築にあたって、特に救急医療や夜間・休日診療、小児科医療、産科医療の充実に向けた施策を盛り込むこと。また、「医療対策協議会」、「保険者協議会」等、地域医療に係る協議会、審議会等の構成においては、保険料を支払う側の立場、患者の立場として、被保険者代表である労働組合を参加させること。

  ② 特に「医療対策協議会」の運営にあたっては、地域ごと、診療科ごとの医師必要数について、現場からの意見・要望を尊重した調査・分析を行うこと。その上で、特に病院勤務医、中山間地域の医師不足に対して、財政措置を含めた実効性ある対策を講じること。

  ③ 各医療機関等における看護師の適正配置を進めるため、潜在看護師の活用策や、短時間勤務など多様な勤務体系が導入可能となるような施策を構築し、各医療機関等に対する、財源を含めた支援を行なうこと。

  ④ 医療費適正化計画に基づく生活習慣病対策や長期入院の是正等の取り組みにあたっては、地域の保険者と連携し健診・保健事業の充実に努めること。また、各自治体および保険者と連携し、生活習慣病予防の推進に向けて、地域医療を担う関係者の協力を得つつ、保健師、管理栄養士等の適正配置を進め、予防効果の検証を行うこと。 

2.社会保険事務所と連携して、保険医療機関に対し明細のわかる領収書を必ず発行するよう指導すること。
 
また、各自治体に対して、国民健康保険の保険者として、保険医療機関に対して明細のわかる領収書の発行状況を確認し、不適切な事例については厳正な指導を行なうこと。加えて、被保険者からレセプトの開示請求についても国保連合会と連携をはかり、速やかに対応すること。

3.各地方社会保険事務局と市町村等の各医療保険者に対し、レセプトのオンライン請求が2011年までに全ての保険医療機関で実施されるよう、審査支払基金、国保連合会とも連携をはかり、遅滞なくその環境整備を支援すること。

4.世界でも有数のがん治療施設である県立粒子線医療センターの事業を推進し、県民が広く治療を受けられる体制を整備するとともに、引き続き個人負担の軽減をはかること。

5.県は、各地の広域連合と連携をはかり、後期高齢者医療制度の保険料負担の実態を正確に把握した上で、新たな保険料負担によって、被保険者の生活に著しい悪影響が及ぼされることのないよう、必要な支援策を早急に講じること。

Ⅷ.福祉行政の拡充

1.介護・社会福祉サービスの充実と利用者の権利擁護の推進

(1) 介護保険法改正、介護報酬改定がめざした理念に基づく介護サービスの実施に向けて、以下の取り組みを進めること。

  ① 県および市町は、サービスの普及および適正利用の観点から、利用方法や制度理念等について、利用者、事業者に対する広報・啓発活動を充実させること。

  ② 市町は、地域の様々な人材を活用したネットワークを構築し、地域包括支援センターを中核に地域支援事業を確実に実施すること。さらに、任意事業である介護給付費適正化事業、家族介護支援事業に積極的に取り組むこと。また、地域包括支援センター運営協議会に被保険者代表を委員として参加させること。

  ③ 介護サービス事業者の規制について法改正がなされたことを踏まえ、県および市町は、事業者の指導・監査について連携を強化すること。また、事業所が廃止される際には、利用者のサービス継続の確保、利用者と馴染みの関係にある介護労働者の雇用確保について行政も十分な支援を行うこと。事業者に対しては労働関係法規・通達の遵守を周知・徹底するとともに、従業者の賃金が最低賃金を下回っている場合は、事業者指定の取り消しを行う等、厳正な指導監査を実施すること。

  ④ 介護労働者の質の向上や人材育成の研修等を充実するとともに、「介護サービス情報の報告及び公表」における調査情報項目に、従業員に対する健康診断や従業員に対する感染症対策の実施有無、夜間を含む労働時間、労働関係法規の遵守状況、社会保険の加入状況を追加すること。

  ⑤ 第4期介護保険事業(支援)計画の策定(市町村は介護保険事業計画、都道府県は介護保険事業支援計画)にあたり、被保険者、医療保険者の声を反映できるようにすること。その際、地域医療や居宅介護サービスの充実をはかり、医療と介護の機能分化・連携による地域包括ケア体制の整備を着実に推進する。療養病床の再編成を着実に進め、社会的入院を解消すること。

  ⑥ 自治体は、制度運営のあり方に対する住民・被保険者代表の意見反映のため、「介護保険運営協議会」を設置するとともに、被保険者代表の委員を参加させること。 

(2) 高齢者福祉や障がい者福祉等を含めた総合的な「市町村地域福祉計画」および「都道府県地域福祉支援計画」を策定し、地域のなかで支え合うという地域福祉を推進すること。

(3) 障がい者の自立支援と社会参加促進の観点から、利用者の実情に応じた障がい福祉サービスを適切に提供すること。

  ① 「障害福祉計画」に基づき、障がい福祉サービス基盤を整備して地域偏在を解消し、移動介護等の地域生活支援事業も含め、必要なサービス量が確保されるよう、十分な財政措置を講ずること。また自治体に指導すること。

  ② 障がい福祉サービスの利用者負担、施設居住費・食費、自立支援医療の自己負担等については、国が「障害者自立支援法の円滑な運営のための改善策」に基づく追加軽減措置を実施していることを踏まえ、自治体としても独自のきめ細やかな負担軽減措置を行う等、必要なサービスの利用抑制につながらないよう配慮すること。

  ③ 条例や規則、要綱等に残っている、議会の傍聴制限、公営住宅の入居制限、公営プールや図書館等への入場制限、保育所への入所制限等は直ちに撤廃する。障がいのある人の社会参加を阻む物理的・心理的バリアを解消し、完全な平等を達成するために、障がいのある人に対する差別を禁止する条例を制定すること。

(4) 高齢者虐待防止法や地域包括支援センターの役割について住民への周知をはかり、認知症等の高齢者が行うサービス事業者との契約や金銭管理等についての権利擁護システムが積極的に利用されるよう促す。また、要介護者の家族のみならず、障がい者の家族や子育て期の親を対象とする相談員事業の拡充と相談員の資質向上に取り組み、福祉サービス利用者の家族に対する総合的な相談・支援体制を整備すること。

(5)新たに施行された「バリアフリー新法」に基づき、移動等の円滑化にかける事業の重点的かつ一体的な推進に関する「基本構想」を、配置計画等を明記して策定すること。策定にあたっては、高齢者、障がい者の参加を保障する。また、「基本構想」の内容について、高齢者や障がい者等が自治体へ具体的に提案できる構想作成提案制度を市民に周知し、制度の活用を促すこと。

2.生活保護行政の改善と就労・生活支援の充実

(1) 福祉事務所において、生活保護基準以下で生活する生活保護を必要とする人が申請に基づき給付を受けられるよう、申請受付等の運営改善を図るとともに、自治体に対しても同様の指導をすること。

(2) 自治体、兵庫労働局、地域の教育機関、企業、労働組合が連携し、職業訓練・職業紹介・就職が連動した離職者や低所得者への支援体制を確立・強化すること。

(3) 福祉事務所を設置する都道府県は、生活保護受給者や母子家庭の母に対する「自立支援プログラム」や、「障害者就労・生活支援センター」の設置等の取り組みを進め、実際に就労することがきるよう、実施体制の強化、ハローワークとの一層の連携を進めること。

(4) 自治体に対して、国民健康保険料が払えない低所得者に対する医療を保障するための支援措置を図るよう指導すること。また、福祉事務所は、国の「規制改革会議」で検討された医療扶助について、受診抑制を強要するような運用を行わないこと。

Ⅸ.安心・安全にくらせるユニバーサル社会をめざして

1.災害に強く、だれもが安心・安全にくらせるユニバーサル社会をめざして取り組みを進めること。「兵庫県住生活基本計画」に基づいて質の高い住生活を実現するため、それぞれの地域で幅広い活動が推進されるように推進協議会を設置し、具体的な計画を策定して 取り組むこと。策定にあたっては、耐震化率やバリアフリー化率はじめ、設計・建設・販売等のそれぞれの段階で安全性など、良質な住まいの確保ができる内容を盛り込むこと。

2.事業所のユニバーサル化と提供される製品やサービスのユニバーサル化を推進すること。また、ユニバーサル社会づくりに関する啓発に務めること。

3.地域格差が言われる中、交通のシビル・ミニマム(生活基盤最低保障基準)維持の観点から、市町と連携して、公共交通事業者、労働組合、住民などの多様な主体で構成する協議会を設置して「地域公共交通総合連携計画」を作成し、住民生活に必要不可欠な交通路線維持に努めること。

4.災害に強い街づくりを推進するために防災予測地図(ハザードマップ)を早急に整備し、防災計画を策定のうえ必要な防災整備事業を推進すること。加えて、広域防災拠点を全県的に整備し、自然災害や大規模事故に備えること。
 
また、災害により被害を受けた住宅の再建を支援する住宅再建共済制度の普及・啓発に努めること。

5.阪神・淡路大震災を経験したわが県は、災害時のボランティアの意識が高まり、民間ボランティアの活動も活発であるが、その一方で災害時のボランティア活動の支援・協力体制が整っておらず、反省点や課題が残っている。災害救援ボランティア活動の支援について、県を中心とした関係機関・諸団体の支援・協力体制を構築すること。

6.警察本部と連携して、安心・安全な街づくりをめざして、交番や駐在所の機能強化をはかり体制の整備をはかること。特に子どもを守る活動を推進するため、地域住民と一体となって取り組むこと。

7.建築確認が期限内に迅速に許可されるよう、構造計算適合性判定員を早急に確保・育成するとともに、必要な予算措置を行うこと。

Ⅹ.勤労者福祉の充実ならびに文化・体育政策の充実

1.兵庫県を支える大多数の県民は勤労者とその家族である。産業を活性化して豊かな兵庫を実現するためには、勤労者の活力を高めることが不可欠である。勤労者の活力を高めるためには、勤労者が自ら学び、地域に貢献するとともに家族と一緒にリフレッシュできる施設の整備とサービスの充実が不可欠であり、以下の勤労者福祉施策の強化をはかること。

(1) 働く者が集い自ら学べる労働会館等の設備ならびにプログラムの充実をはかること。

(2) 働く者が地域に貢献できるボランティア活動の支援のため兵庫勤労者ボランティアシステムの更なる強化をはかること。

(3) 働く者とその家族がともにリフレッシュできるように、連合兵庫と兵庫県経営者協会が運営改善を支援している「憩いの宿」の利便性の向上をはかるとともに、勤労者福祉施設の充実をはかること。

(4) 中小企業に働く者の福利厚生を促進するため「勤労者福祉サービスセンター」の運営の健全化と充実をはかること。

(5) 勤労者ならびにOBとその家族に対して、連合兵庫は様々な福祉サービスを提供する地域におけるワンストップサービスの拠点として「姫路ライフサポートセンター」を開設した。本施設の充実、また他地域への展開、そして地域における子育て支援や勤労者とOBの生きがいづくりなど、連合兵庫と連携して地域における福祉活動の充実をはかること。

2.広く県民の心を豊かにし、青少年の育成に資するような芸術・文化施設の充実をはかり、芸術・文化活動の支援を充実させること。

ⅩⅠ.教育行政の充実

1.教育の機会均等を確保するために、自治体が定める就学援助の水準は、義務教育でかかる費用を賄えるものとすること。また自治体が運営する高校生に対する奨学金等(授業料等への補助を含む)について、給付化など制度の改善・拡充をはかることとし、それらも含めた教育予算の拡充を図ること。

2.教育委員会と連携して勤労観・職業観を育む教育を推進すること

(1) 子どもの成長段階に応じて、系統的に「働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)」に係わる教育を進めること。労働が国民の権利であり義務であること、働く者の権利、労働組合の必要性などの教育を通じて勤労観・職業観を育む教育やキャリア教育を進めること。

(2) 成長過程に応じた労働体験やものづくり教育の履修時間の拡大と内容の充実をはかるとともに、労働法などのワークルールを学べるようにし、職業能力や進路選択力を高めること。

3.開かれた教育行政を実現すること

(1) 教育委員会は、より教育現場に近い段階への権限移譲を実現し、上位組織は基本方針の策定と下位組織への支援を主な役割とし、場合によっては教育委員会の持つ権限を、学校に付与することも検討すること。

(2) 教育委員会は、教育行政の情報公開を推進するために、会議を原則公開し、公聴の機会を増やすなどの施策を講じること。

4.それぞれの自治体ならびに教育委員会と連携して、以下の取り組みを進めること。 

(1) 教育環境整備の一環として、30人程度を標準とした少人数学級を実現すること。 

(2) 通学路の安全・防災ネットワークづくりや学校の安全管理体制を強化し、子どもの安全を地域で確保すること。

(3) 学校運営に参加・協力・支援できる個人・団体・企業等を対象に、「学校協力員(団体・企業)制度」を学校および教育委員会単位に導入すること。

(4) 学校評議員制度を公立・私立を問わずすべての学校に導入するとともに、構成員を拡大し、保護者、地域住民、教職員の代表による構成に改めること。
 
また、児童・生徒に関わる課題を審議する場合は、児童・生徒の代表が参加できるようにするとともに、学校運営に対する参加型の制度としていくこと。

(5) 都道府県・市町村・教育委員会は、学校を地域のコミュニティ拠点として活用し、子どもと大人の協働の場として機能を持たせること。
 
また、学校施設の建築・整備を進めるにあたっては、耐震化の推進はもとより、環境を考慮した学校施設の改築・整備、また安易な統廃合を行なうのではなく、高齢者・障がい者等を含めた地域住民との交流を意識した多機能・複合施設化を進めること。

ⅩⅡ.環境保全と地球温暖化防止

1.京都議定書の第一約束期間(2008~2012年)の開始に際して、「新兵庫県地球温暖化対策地域推進計画」に基づき、温室効果ガスの削減のための実効性ある取り組みを進めること。このため、「地球温暖化防止活動推進センター」の活動の充実をはかるとともに、住民参加を基本として各地域での取り組みを推進すること。

2.「環境教育推進法」に基づき、行政のみならず、県民、事業者、民間団体が積極的に環境保全活動に取り組むため、地球温暖化対策の推進、自然環境の保護、リサイクルの実践等につながる環境教育を、学校、地域、職場で推進し、環境保全についての県民の意識と意欲を高めていくこと。

3.各自治体における分別収集等の取り組みの推進を支援すること。取り組みに当たっては、容器包装リサイクル法の一部改正にともない、以下の点に留意すること。

① 処理に係る費用の透明性・効率性の確保
② 消費者が分別排出しやすい識別表示の徹底や容器包装の開発の推進Ⅲ.食料・農林水産政策

1.食料自給率の向上に向けて、実践的な「食育」と地産地消、国産農産物の消費拡大、国産農産物に対する消費者の信頼を確保する施策を推進するとともに、地域の条件や特色に応じて、地域の食料自給率や地産地消の取り組みの目標設定等の取り組みを進めること。
 
た、地域における食料備蓄体制の点検・整備を推進すること。

2.食の安全確保に向けて、保健所における食品衛生業務を拡充し、食品に関する苦情相談や、食品の製造・流通等への監視指導の強化を図ること。

3.「食育推進計画」に基づいて食育を推進すること。食育は、とくに子どもや高齢者の健康、さらには食文化の継承の観点からも重要であり、学校などの関連機関と連携をはかりつつ、学校教育および社会教育における体験学習等の充実をはかること。また、特に地場農産物を使用した学校給食や休耕地を使用した学習農園などを進め、農・林・漁業の現状を学ぶ機会をつくること。

ⅩⅣ.公務員の労働基本権確立と公務員制度改革

1.公務員の労働基本権を確立し、公正、中立、透明かつ民主的な公務員制度が実現するように努めること。

2.行政改革の実施により、行政機関・独立行政法人等に働く者の労働条件、雇用に影響が予想される場合には、必ず事前に関係労働組合との交渉・協議を行い、労働条件の維持、雇用の確保に万全の対策を講ずること。

ⅩⅤ.「新しい公共」の創出に向け、市民参加のための政治・行政改革

1.「新しい公共」に市民が参画する自治体体制の構築のため、以下の取り組みを進めること。

(1) あるべき自治は、行政の関与が低く市民の関与が大きい社会である。このような市民自治社会を実現するためにも、多様な担い手が合意形成を前提に提言・実施できるしくみづくりを行なうこと。

(2) 市民にとって質の高い公共サービスを確立するため、担い手を選定する際には、担い手側の事業遂行能力や職務における公正な労働条件等も考慮したうえで決定すること。

(3) 安全・安心に関わる公共サービスについては、市民が参画する審査会等を通じながら最終責任者である行政が責任を持って監視体制をしくこと。

2.地域行政に市民が参画するための公会計の整備

(1) 市民が行政水準にあった事業の必要性を見極めることができるように、事業別の費用を住民一人当たり負担に置き換えた数値を開示する等、住民に対する説明責任を果たすとともに、徹底した情報開示を行なうこと。

(2) 将来に向けた税制の安定性や市民負担を明らかにするため連結のバランスシートを作成し、自治体の現状の資産並びに将来にわたる負債を開示することで、住民の自治体政策への参画意識を啓発すること。

3.各自治体や選挙管理委員会ならびに地方議会・議会事務局と連携して、有権者の投票機会の拡大や行政・議会への参加を促進するため、期日前投票所の整備・充実、電子投票制度の研究・導入、洋上投票や在外投票の運用充実、議会の夜間・休日開催など一層の公開や傍聴促進への環境整備を行うこと。

4.県民に信頼される政治を確立するため、情報公開の徹底や公選公務員の地位利用による収賄の禁止・処罰に関する実行ある条例の制定などを行うこと。
 
また、各自治体に対して条例の制定などを促すこと。

以上